日本アルプス花回廊・・白馬岳編3~6

お矢来すずめ

 

引き続き3~6編まで全てお届けします。


<白馬岳編その3>

 

タテヤマリンドウ

・・石鎚山系で見受けられるリンドウ(フデリンドウ)はすぼんだラッパ状に咲いていますが、ここのリンドウは色遣いと言いパッと開いた形状といいなかなか華やかな雰囲気を醸していました。

 

 

 

 

 

ウラジロナナカマド

・・錦秋綾なす秋の山肌を彩る赤色紅葉の主役として余りにも有名ですが、色付くその前にはこのように清楚な花を咲かせ、そして赤い実も付けるプロローグを経ているのです。写真の背景は白馬大池山荘へと繋がる白馬乗鞍岳稜線直下の雪渓で、悪戦苦闘の末1時間かけて登ったのですが、その後乗鞍岳山頂ケルンのところで例のNHK撮影隊に追い付き感動の(??)御対面となりました。
 



ミヤマダイコンソウ

・・黄色い花付きは五弁なので一見、キンバイ類と見間違いそうですが葉っぱが大きく立派なのですぐ判りました。

キバナシャクナゲ

・・白色に近い花なのになんでキバナ・・と思っていたら、蕾から咲き始めにかけては黄色なんだそうです。



ハクサンコザクラ

・・信仰の山・白山で最初に知られ、日本海側の高山帯に多く分布しここ白馬岳にも根を下ろしていました。

 

ハクサンイチゲ

・・日本アルプスではシナノキンバイやチングルマと共にお花畑を構成する代表格の花ですが、単独でも大群落を作る逞しさを持った花なんです。

 

 

 



ミヤマアキノキリンソウ

・・夏のアルプスではこの花が最後まで咲き残り、散ると一挙に秋が深まるんだそうです。

チングルマ綿毛

・・標高2000㍍辺りでは、チングルマがすでに花を落とし綿毛に姿を変えていました。



<白馬岳編その4>

 

チングルマ

・・それが白馬岳主稜線に架かるとちゃんと花を残して待っていてくれました。その面白い名前の由来は、実の形がいにしえの玩具・風車を連想させるところの稚児車が訛ってのことだそうですが、この実が生ったところも一度見てみたいですね。

チシマギキョウ

・・一見、リンドウかと思いましたがそちらが乾燥した草地に咲くのとは違い、岩場のわずかな隙間に根を下ろして咲く姿には清貧の美しささえ漂わせています。

 

 



イワツメグサ

・・山行中の至るところに咲いていて、その可憐さに惹かれてよくよく観察してみると花弁が10枚ではなく、5弁が深く切れ込んでいたのです。

ハクサンフウロ

・・フウロソウはシコクフウロ等それぞれの咲く各地の山や地域名を冠していて、また趣きも皆少しずつ違っていて楽しいです。

 



タカネイブキボウフウ

・・先のオオハナウドといいセリ科の分別は難しいのです。葉っぱなど植生の違いで判断していますが、違っていたら・・ゴメンナサイ。

 

 

 

ミヤマアズマギク

・・ミヤマという名からして平地のアズマギク(野春菊系)の高山型変種だそうです。15㌢位いの背丈に2㌢程の可憐な花を乗っけていました。



ミヤマタンポポ

・・これも平地でお馴染みのタンポポの高山型変種。ただし平地で見かけるタンポポの半分は今や外来系もしくはそれらとの交雑種とのこと、、。これらの純血種としては厳しい高山域に活路を開いた悲しい選択肢の果てなのか・・とも穿ってしまう。

 

 

クモマミミナグサ

・・これもイワツメクサと同じナデシコ科でお互いよく似ていますが、5弁の花弁の切れ込みがそれほど深くないので区別できました。



<白馬岳編その5>

 

タカネナデシコ

・・そしてナデシコ科の御本家も各地の高山帯に生息域を広げて頑張っていました。ヒト科も植物に負けないよう,どんな環境変化にも柔軟に生きるしたたかさが求められていると思いますね。

コメススキ

・・何かの花の名残りかとシャッターを切ったのですが、これでもイネ科の列記とした花だったんです。

 

 



ヨツバシオガマとハクサンボウフウ

・・ヨツバシオガマはよく見ると鶴に似た鳥の頭部のような独特の美しい花を付けていますが、その裏では根の部分で他の植物の栄養を横取りしている半寄生植物なんだそうです。顔に似合わぬ・・というのはヒトの世界だけではないようです。ハクサンボウフウはセリ科の他種との区別がこれもまた難しかったです。

タカネヤハズハハコ

・・石鎚山系で見られるホソバノヤマハハコとは同系で花付きはよく似ていますが、葉っぱが全く違いますね。

 

 

 

 

 

 

 



アオノツガザクラ

・・これはまた銅山峰で見られるツガザクラとは葉っぱや花の姿かたちはそっくりなんですが、花の色とその萼までもが薄黄緑色をしたちょっと変わった雰囲気を持ったツガザクラでした。

 

ハクサンイチゲ(白)とシナノキンバ(黄)・・お花畑ではよく一緒に咲いている仲良しコンビです。シナノキンバイは先に紹介をしたウラジロキンバイと比べると花も葉っぱもボリュームがあり、アルプス高山帯の何処にでも根を下ろしていて見た目からしても逞しい花です。



ミヤマダイモンジソウ

・・初めて目にした割にはすぐに名前が出てきたのは、その大の字に咲く花弁が誰にでも判りやすい形からでしょうね。



<白馬岳編その6>

 

イブキジャコウソウ

・・伊吹山に多くの群落が見られ、葉っぱからは独特の芳香を放つところから命名されたそうです。

ハイマツの雄花

・・貴重な鳥・ライチョウにとっては住み家と餌にもなっているのです。

 

 

 

 

 



ミヤマクワガタ

・・今回の山行で是非ともアルバムに収めたかったミヤマクワガタ。四国の山で見たヤマホトトギスもそうですが見ていて何んとも楽しくなりますね。

ホソバツメクサ

・・この花はここ白馬岳と北海道、東北の数少ない蛇紋岩質の山にのみ根を下ろしている超希少種だそうです。

 



ミヤマオダマキ

・・白と青紫のグラデーションが何んとも華やかでその美しさに心を奪われそうでした。かの静御前が鎌倉の舞台で苧環(おだまき)の舞を艶やかに舞い唄ったという史実に基づいて名付けられたとは頷ける話ですね。

 

イワベンケイ

・・静御前のお次は弁慶登場!!。これはまったく演出ではなく写真は白馬撮影行の時系列に紹介をしているのでホントに偶然なんです。そしてこの後御紹介いたしまするはヨシツネ○○○・・なんてことになりますと、これはもう眉唾ものに・・。



ウルップソウ

・・本編の最後に御紹介をいたしまするは、これも超貴重種、北海道の礼文島と八ヶ岳とここ白馬岳の三山にしか咲かない花。いつまでも頑張って子孫を遺して行って欲しいものです。



さすがに花の山・白馬岳でした。

ここまで紹介をしました花々は登下山、一泊二日の登山道脇だけで見かけたもので、他にも例によってピンボケ写真だったり、まだ名前が特定出来ていない幾つかを合わせると50種に及ぶ花々に出会うことが出来ました。

それも白馬岳としては7月は花の時期が始まったばかりで、8月の最盛期にはもっと多くの花々が咲き乱れるとのこと・・今またその頃に是非訪れて、コマクサなんかも見てみたい想いがふつふつと湧いてくるのです。

少々季節外れのレポートになりましたが、花の咲かない時候に僅かながらの癒しにでも・・との一考で投稿させてもらいました。

コメント: 6
  • #6

    桜餅 (木曜日, 10 1月 2019 22:37)

    新年おめでとうございます。
    ご親切に山歩きのアドバイスをありがとうございます。
    無意識に歩くと足に負担がかかるので、少しでもアドバイスを心に留めてたのしめたらと思います。
    生来の運動嫌いですが、今年は少し変えていければと思います。

    本年もどうぞよろしくお願い致します。

  • #5

    お矢来すずめ (月曜日, 24 12月 2018 23:08)

    日本アルプスは3000㍍級の標高を誇りその雄大な山容に抱かれた山懐に展開する自然は多様性に富みそれに伴って動物・植物界の生態系も自ずと特異性が現れるというものです。そこに足を踏み入れた者は皆、その魅力に必ずや虜になること間違いないでしょうね。

    レポートにうっかり・・登下山一泊二日と書いてしまいましたが、登山口の栂池自然園(1800㍍)から標高差600㍍を登ったところで白馬大池山荘に一泊、そして二日目に白馬岳山頂(2900㍍)に辿り着きその後、頂上直下の白馬山荘泊、三日目に例の大雪渓を転びながら猿倉山荘バス停に下ったのでした。
    このように一日の行程を4時間から5時間に設定して、あくまで花や景色を楽しみながら登るのですし、テント泊の重装備と違って雨具と着替えや防寒着がメイン装備の40㍑ザックなんか背負ってるのも忘れるくらい軽いもんです。(^_-)
    荷物で唯一の金属はカメラと三脚ですが、カメラは昨年の北岳山行に合わせて念願の一眼レフを新調、、といってもひうちさん愛用の本格的な物ではなく軽量薄型のコンパクトミラーレス一眼にしました。しょっちゅう足を止めて花や景色を撮りまくるので直ぐにケースから取り出せ、肩にかけていても全く気にならない簡便性がいいですね。プライスも一年落ちのモデルでしたからメーカー希望価格の半値でしたよ。

    以上の如く、皆さんは私が特別な体力や脚力を持っているが如く勘違いされていますが、ゆっくりとしたペースで目に映る花や景色に意識を移して登れば急登さえも気持ち的には楽になりますよ。それに2500㍍を過ぎると酸素濃度もぐっと薄くなりますから身体的にも高山病予防にもなります。反面、ケーブルカーやバスで一気に登る立山等は高度純化に悩まされる顕著なケースですね。

    ここで、すずめからワンポイントアドバイス。
    山を登るとき、腿を上げてグイグイ進むのではなく、歩幅は出来るだけ小さめにして腰を意識した重心をゆっくり前に移す感じですと自然に足が前に出る・・あくまでゆっくり体重移動で登る。
    歩幅小さめが出来ない段差が大きい処は、片足を掛けてから身体を前に倒すような体重移動だと楽に越えられます。
    また胸突き八丁のような急坂では、足先を左右に開いた(開き方は斜度によって変える)がにまたで、体重移動は右と左にちょっとだけ振りながら登るとこれまた楽です。
    いちばん筋肉痛や関節痛を起こしやすい下山時ですが、踵でどすどす下りるのは愚の骨頂、つま先が先に着くぐらいの感じで足裏全体でゆっくり着地すると下半身への衝撃が軽く済み、なおかつグリップ力が効いて滑りにくい利点もあります。このとき上半身はあまり前かがみにならないように、、急な下りは少し腰をおとすぐらいだと腰痛も起きにくいと思います。

    NHKの百名山番組の山岳ガイドの人たちの足運びが基本的な疲れない歩行ですから参考にして、お近くの傾斜道なんかで・・ためしてガッテンしてみてね。

  • #4

    桜餅 (日曜日, 23 12月 2018)

    こんにちは。白馬岳の花図鑑白馬岳、拝見しました。
    本格登山の重装備で、道中に足を止めて撮影なさるとの事に驚きです。
    周りの景色に目を配る余裕も。私は、散策ですら高地のせいか運動不足がたたってか、息が上がって大変でした。
    荷物も厳選なさっているのだと思いますが、撮影は高機能のカメラですか?
    同じ種類の花でも、四国の山花と形状が違うとか興味深いお話でした。
    労作を共有させて頂いて本当にありがとうございます。

  • #3

    パタリロ (日曜日, 23 12月 2018 12:43)

    今回もたくさんの素晴らしい写真、ありがとうございますm(_ _)m
    登山をしながら、これだけの写真を撮るのは大変なのでは?
    50種も花があるとは(・o・)
    パタリロには、どの花が似合うかなぁ(=^・^=)

  • #2

    ひねもす・のたり (金曜日, 21 12月 2018 21:46)

    全6編の力作ありがとうございました。
    今年は5月の稲叢山のアケボノツツジに始まり、銅山峰のツガザクラ、そして
    花々の山・石鎚山周辺・別子山系、更に今回の日本アルプス花回廊 白馬岳6編と花々に随分と関心を抱かせてもらった一年でした。
    そして、すずめさんが仰る様に「花の咲かない時候に僅かながらの癒しにでも」の通り気持ちが明るくなって良いですね!
    まとめると、一冊の花図鑑になりそうです。
    私め以前に言いましたが、仕事に出る時もカメラを携える事にしてますけど、この季節殺風景に見えて中々良い写真が撮れません。街に出てみようかな。

  • #1

    ひうち灘 (金曜日, 21 12月 2018 21:40)

    スズメさんこんばんは。
    拝見しました。素晴らしいレポートですね。
    超希少種から…よくぞここまで花々を!!撮影されたな!!と
    ただただ感心して見てました。
    有り難うございました。すごい。