(わたしの重大ニュース)
お矢来すずめ
私の68年になる来し方は、幼いころからいつも背後にある山を意識して育ってきたような・・
それはお祖母ちゃんに手を引かれてよちよち登った八堂山であったり、小学生の遠足ではほとんど駆け足で我先を競った高峠城址だったり、
中学生の頃には3泊4日で石鎚~瓶ヶ森~笹ヶ峰縦走を教員をしていた叔父夫婦と・・、
そして高校時代はもう学校の行事ごとで授業が無いと分かるとそっちのけで悪友と二人、山を歩いていた。
それがこの歳になっても、春、陽炎立つ向こうに明るい水彩模様の山を見たとき、
真っ青な夏空に際立つスカイラインが見えだしたとき、
紅葉前線のニュースを毎日のようにテレビがやりだしたとき、
木枯らし一号が吹いたらもう霧氷は、初雪はいつかと・・
そんな移ろいゆく山々のその時のそこに立っていたい感情がこの歳になってもまだ、無性に湧いてくるのです。
そんな私ですから大人になるにつれ当然のように日本一の富士山に恋焦がれるようになり、そしてその「富士さん」を間近に仰ぎながら山歩きがしたくて、今年7月、二年越しの計画を実行するべく一人、山梨に向かいました。
以下は北岳登攀レポートです・・よろしく御笑覧ください。
朝一の特急しおかぜに飛び乗りのぞみ号、しなの号、あずさ号と乗り継ぎお昼過ぎには信玄公鎮座まします甲府駅に到着。
登山口の広河原への最終便を待つ間、徐々にアドレナリンが体中に満ちて気合い十分の臨戦態勢・・気分は謙信公ダ~。
アレ・・乗客は私ひとり。しかも車掌さん付き。これでボンネットバスだったら申し分のない昭和レトロ旅情だったのに・・。
バスに揺られること1時間半、降り立つとすぐに野呂川に架かるつり橋・・そして夕焼けに染まる北岳に初対面、仰ぎ見ることしばし・・。
そこを渡ればもう南アルプスの世界だ。
明日の登山ルートとなる大樺沢と野呂川の合流点に北岳登山の出発点となる広河原山荘が建つ・・山じゅうを響かすヒグラシが大合唱で迎えてくれた。
夕べは早くから寝て睡眠充分。予定より30分早く6時30分出発・・と、すぐにこの警告板。慌ててクマよけ鈴を腰に・・。
雪解け水が怒涛の唸りをあげる大樺沢沿いの登りに黙々と歩を進める。
渓谷沿いでしかも朝一のこと、気温は10℃少し・・
私の山歩きは時速1.5㌔、汗もあまり掻かず渓流を愛でながら気持ちのいい登山だ。
登り始めて約3時間、樹林帯を抜け目の前に目指す北岳が見えるところまで来た。
小腹が空いたので山荘が用意してくれたおにぎりをほお張り小休止・・
雪解け水は5秒と浸けていられない出来たて純生。
ここから登山道は雪渓歩きが楽しめる左俣コースと私の行く右俣コースに分かれるのだが、
気温も上がり心臓破りの3時間続く急登が待っている。
これも想定内、北岳登山の真骨頂と気合を入れ直し・・セ~の! セ~の!
息も絶え絶え小太郎尾根に着いたときはほぼ限界点。
へたり込んで見渡すと大渓谷をはさんで目の前の向こうに千丈ヶ岳と甲斐駒ケ岳が・・
よお来たの~・・とほほ笑んでくれていた。
奮起一発腰をあげたどり着いた北岳肩の小屋・・なのにご覧のようにガスが下から沸きだってさっぱり・・
この分だと真っ赤に燃える夕焼けや満天の星空も拝めそうもなさそう。
しか~し、小屋の受付横のベンチでどこかの誰かさんがスーパードライをウグ、ウグ、、、プハ~、ウメ~と遣っているではないですか。
当然ワタシも一缶(500円)で自分に御褒美を・・ウマカッタ~!!
標高3000㍍の夕食メニューです。
最近は登山ブームで宿泊客増加に対応するべく何から何まで全てヘリコプターで搬送する小屋が多くなり、当然食材やビールに至るまでとても充実しているのです。
そこで私も缶ビをもう一缶遣って、そそくさと早めに寝ることに・・。
250人収容可能の小屋ですが、その日は160人の宿泊客でした。
不公平のないよう原則一人一畳分のスペースに上下布団と毛布2枚で雑魚寝するのですが、疲れと高揚感で朝まで何のトラブルも無く、一気に朝まで熟睡できますね。
早く寝たせいか3時過ぎには目覚め、混雑するトイレもいち早く済ませて外を見ると満天の星空・・ヨッシャ~!とばかりカメラを用意して、4時過ぎからは黎明するアルプスの移ろいを撮りまくりました。
写真はモルゲンロートに染まる北岳山頂部分と対照的にピンク色に染まる富士山ですが、
もう気温(3℃)のことなど我を忘れていましたね。
朝食を済ませた人から順次、目的の北岳山頂を目指して1時間弱の岩場をよじ登ります。
振り向くと真下に夕べの宿・肩の小屋、そして遠くに甲斐駒ケ岳の雄姿、その右彼方に
八ヶ岳連峰も望める好天気に胸が躍ります。
山頂がすぐそこに見えるところまで来ると、すでに先着のクライマーが綺麗に見える富士山に歓声を揚げていました。
日本一の富士山を二番目の北岳から眺めるのが最高の富士見台といえるでしょうね。
勇躍、北岳山頂に立つことが出来ました。
大好きな富士山をはじめ、遠くには中央アルプスや北アルプスの槍ヶ岳、穂高岳連峰までも望める360度のパノラマは絶景のひとことに尽きます。
もう後はな~んも言えね~!!
写真は南側の眼下に小さく赤い屋根の北岳山荘が見えていますが、次回もう一度北岳に・・
そしてその時は写っている稜線尾根伝いに間ノ岳、その左の農鳥岳までを縦走踏破したいと願って撮っておきました。
今回の北岳詣でのもう一つの目的は、北岳固有種のその名もキタダケソウを撮ることでた。
肩の小屋主人からは6月の花盛りを過ぎてはいるが、山頂付近の岩場にはまだ少しは・・
ということでやっと見つけて得意満面のショットを土産に帰って来て、その他の花々と一緒に名前を確認していましたら、なんとそれはチョウノスケソウというキタダケソウによく似た花だったのでした・・
ということで是が非にでももう一度北岳・・なんですよ。
夏の日本の山やまはどの山域、どのコースを歩いてもお花畑が珍しくなく咲き誇っていてそれぞれにカメラを向け、帰ってからそれぞれの名前を検索、確認するのも楽しみの一つですね。
ちなみに写っている白いのはハクサンイチゲ。黄色いのはシナノキンバイ。紫色のはミヤマオダマキです・・。
花の名前を調べていて確認出来た時は、なんか得をしたような喜びが湧いてきますね。
以上、唯我独尊的、自画自賛的、独りよがり的・・北岳登攀レポートを最後まで見て頂きありがとうございました。
桜餅 (月曜日, 22 1月 2018 21:42)
お矢来すずめさん、こんにちは。
美しい写真とともに迫真の登山レポート、大変楽しく拝読いたしました。とても分かりやすくて、時系列で楽しませて頂きました。
海や山、まさにお言葉のように人知を超えたその存在が、人を惹きつけてやまない気がします。自然に癒されるというか、自分のささやかな迷いなどその存在の前には小さく思えるというか。
おひとりで行かれたのですね。一人旅はマイペースが守れて、複数旅とはまた違った楽しさがありますよね。
写真はどれも澄み切っていて空気の清浄さがこちらにも伝わってきます。あの独特の空気のひんやりした、景色のくっきりする感じ。
北岳にはキタダケソウという固有種があるのですね。私は山野の草花などには疎く、山固有の花があるのは初耳でした。是非、北岳再訪のオリには、写真でレポートくださるのをお待ちしております。
ハイキングレベルですが、私も山に行くのは好きです。といっても、年に一度くらいなのですが。昨年は一人で雷鳥と雷鳥ベビーを見に富山の立山に行きました。
すずめさんの登山レポート、これからも楽しみに待っています。そして今後の登山の参考にさせていただきたいです。
どうぞよろしくお願いいたします。
え?姫 (金曜日, 19 1月 2018 15:22)
ひねもす・のたりさん、お気持ちだけありがとう。
お矢来すずめさんの写真で石鎚山を眺めています。
ひねもす・のたり (木曜日, 18 1月 2018 21:41)
え?姫さん、すずめさんこんばんは。
横からおじゃまします。
え?姫さんがコメントくれてた12日の翌13日私は車を走らせて西条に向かってました。 コメントに気がついたのが翌14日。
12日に気が付いていれば、お迎えに参上しましたのに残念。
広島道前会に関係のない男ばかりが集まっての飲み会でした。
卒業後50年式ではお会いできるのを楽しみにしております。
お矢来すずめ (月曜日, 15 1月 2018 22:10)
え?姫さん、のたりさん・・こんばんは。
本当に自然というものはいいですね。
育まれ仰ぎ見上げたふるさとの山々は勿論のこと、荒涼とした北の大地の無機質とも思える厳しさにも、そして標高3000㍍に展開する大パノラマに圧倒されたことも、みなそれぞれを想うとまたたまらなく愛おしい気持ちにさせられるんですよね。
月並みですが、そこには人の喜怒哀楽や人知を超えた100㌫の世界が展開しているからだと私は畏敬しています。
そしてまた、世俗を離れ非日常性を求めてそこに行きたくなるんですよね。
え?姫 (金曜日, 12 1月 2018 08:40)
八堂山、高峠・・・
懐かしい 懐かしい
子どものときから毎日見上げた石鎚山、きょうは青空に白銀の峰を輝かせていることでしょう。
見たいなー
クルマ走らせて見に行こうかなー
それから、私も大好きな富士山が見える北岳登頂。
このページ上に、私も一緒に歩かせてもらったような
そんな気分にしてくれました。
ありがとう。
ひねもす・のたり (日曜日, 31 12月 2017 18:36)
すずめさんこんにちは。
まさに今年すずめさんにとっての「わたしの重大ニュース」ですね。
「北岳山頂から日本一の富士山を望む!」念願が叶い私までもが嬉しい気持ちです。
記事の中にある「目的の北岳山頂をめざして一時間弱の岩場をよじ登ります。」
との事、ここは私には無理でしょうね。
二年越しの計画を実行され充実感が私事のように伝わります。
私も似た心境を経験しましたが、五年前に二年越しの計画を実行した事を思い出しました。
北海道一週間の、ある意味贅沢な一人旅です。
その行程は道北と道東のみ。
まず最北端の宗谷岬、利尻島、礼文島に入り、網走経由で知床半島の先端部まで。
今振り返っても、もう一度行きたい気持ちになります。
今回の投稿写真も臨場感が伝わり、一緒に行って来たような気分になります。
また行きたくなるでしょう。