小さな藩の奇跡

お矢来すずめ

『小さな藩の奇跡』 読後紹介をします。

 

秋もついぞ深まり読書する時間もおのずと増えようというもの・・


西条市立図書館で、最近目に留まった郷土の歴史本 『伊予小松藩会所日記』 増川宏一・北村六合光(原典解読)は、江戸期において地方小藩での様々な出来事が書き綴られていて、当時の人々の小説とはまた違った様子でひた向きに生きていた生々しい物語りとして、是非ご一読の紹介をさせてもらいます。

 

石高わずか1万石、城もない、正式な武士は僅か数十人、藩内の人口は一万人余り、外様大名として江戸時代の230年間を明治維新まで取り潰されることもなく、領地替えにも遭わず、さまざまな苦難を質素倹約、周囲をすべて親藩と天領に囲まれていて、その方への付け届け等は欠かさず、細心の気配りに全神経を費やしながら、涙ぐましい生き残りを賭けた
小さな藩の記録が記されている。

 

伊予小松藩・一柳(ひとつやなぎ)家の家老職喜多川家が、代々にわたって政務を執り行いつつ、その会所において日々の記録を書き綴った、時代考証の上においても稀にみる貴重な資料としての 『伊予小松藩会所日記』 は読み進めるにつけ、現代人の考え方や生き様とは基本的にはなんら変わらない人の営みと併せて、現代の中小零細企業経営の苦労にも相通じるものが読み取れ、共感を覚えること多々に及ぶこと間違いなしの好書です。

 

旧小松町をふるさととされている諸兄、もしくは当の一柳家にご縁のある方のみにとどまらず、道前地域の歴史的成り行きとしてもまた興味を持たれるむきがおありかと思い、ご紹介をさせて戴きました。

 

一柳直盛(初代西条藩主六万八千石)任地途次死去に付き遺領分地    
      
            長男直重(西条藩三万石に)二代のちに勤仕怠慢により改易                   
      
            二男直家(播州小野藩川之江領有二万八千石に)直家死後一万石に減封
      
            三男直頼(小松藩一万石に)明治維新まで9代を数えその後子爵家に

コメント: 4
  • #4

    桜餅 (月曜日, 04 12月 2017 00:40)

    すずめさん、こんにちは。
    預かった前田綱紀が名君で、多分迷惑だったでしょうに一柳の元殿様を大切に扱ってくださって結構楽しく長生きなさったような話でした。

    小松藩が一代限りならともかく、幕末までそのような生き残りを図れる藩だったことに興味津々です。記憶違いかもしれませんが、小松藩が田んぼ用に埋め立てて出来上がったころに親藩の西条藩が言いがかりをつけて横取りしたり、境界の補修を小松にさせたりということにも耐えたような話を聞いたことがあります。いつか本を手にとりたいと思います。

  • #3

    お矢来すずめ (水曜日, 29 11月 2017 22:47)

    桜餅さん、のたりさん・・こんばんは。

    しかし・・驚きましたよ!お話の桜餅さんが訪れた金沢城のガイドさんは四百年近くも前の加賀藩内での様子を、しかも日本の歴史上、その表舞台で常に存在力の大きかった前田家に於いて様々な出来事があったなかで、そこまで周知されてガイドをされている方がお居でるとは・・何とも恐れ入りました。
    そしてまた加賀百万石、前田家も外様大名の筆頭格として維新まで世を継いだ名家だけに、小さな藩の元殿様に対する処遇に於いても抜かりなく幕府には少しの指弾も許さない対応が為されていたんでしょうね。

    失政や勤士怠慢に付き・・という点についても私も同感で、その殆んどが云われなき言いがかりでの改易や減封だったんでしょうね。お世継ぎ問題と御家騒動、○○守乱心に付き・・なんていうのは時代劇的ネタとしては物語を面白くするんですけどね・・。

  • #2

    桜餅 (水曜日, 29 11月 2017 20:28)

    すずめさん、こんにちは。地元の図書館ならではの推薦図書ですね。
    「その方への付け届け等は欠かさず、細心の気配りに全神経を費やしながら、涙ぐましい生き残りを賭けた」この一文からも、涙ぐましい様が浮かんできますね。
    付け届け。。。細心の気配り。。。時代が変わっても人のすることは変わらないようで身近に思えます。何代も誰一人欠かすことなく乗り切ったなんて驚異的でもありますね。

    以前、金沢城を訪れた時にガイドの方に聞かれ愛媛の西条の出身だと名乗ってお話をしたことがありました。そうしましたら改易になった西条藩最後の一柳の殿様が前田家にお預けになって終生暮らした場所をご存知で、古地図を取り出して教えてくださったことがありました。加賀藩では、訳あり人でありながら元殿様で、上げるわけにも下げるわけにもいかず、しかも壮健で元気いっぱいの方でその後長生きされて取扱いに困ったらしい、なんて話も伺いました。
    個人的には勤士怠慢などは言いがかりで、ほかの外様同様、松平の子孫の行先を確保するための改易でなかったかと思ったりしています。

    いつか機会があれば、あの素敵な西条図書館で読んでみたいと思います。良い本をご紹介くださいましてありがとうございました。

  • #1

    ひねもす・のたり (火曜日, 28 11月 2017 23:52)

    すずめさんこんばんわ。
    ブログ記事を読んでると、ん? これは誰が書いたの? え? もしかしてすずめさんが?
    やはりすずめさんが書いたらしいが、それにしても文学的というかアカデミックな文章というか。
    私には真似が出来んぞね。
    ノンフィクション、ドキュメンタリー本は、相応の心構えを持って読まないと、こちらが挫けてしまう場合がありますが、一度は読んでおきたいですね。
    明治維新を乗り切ったのですか。
    広島道前会員には小松、丹原、壬生川方面の先輩方が居るので、興味を示して下さると嬉しいですね。